
モニュメントバレーを背景にヒロ君と
白いカローラに乗ってアメリカ横断の旅は始まった。ユウスケはハワイに一人暮らししていた兵だけあって、なかなかタフで気難しいところがあったので、なんとかやっていけるかどうかちょっと不安だったが。途中まで同行した ヒロ君はアメリカの文化に素直に憧れてる、湘南かどこかのバーのマスターで、彼がしばらく潤滑油になってくれたってところだろうか。
ロスを一旦出ると、そこはもう乾燥した荒野だった。とんでもなく広い平らな地をただひたすらに進む日々が始まった。ラスベガスに取りあえず向って、後はアリゾナやテキサスなど、南の州を廻って東海岸へと向う計画を立てた。次にどの町に寄るかは、行く先々で話し合って決めた。最初は左ハンドルに慣れてなくて、逆走したり、コーナーでワイパーを回したりなんてのがしょっちゅうあった。食事は都市部を出ると、ほとんがガソリンスタンドの不味いサンドイッチか、マクドナルドなどのファーストフードだった。
ラスベガスは予想していた通り、またはそれ以上のネオンの灯り。取りあえずスロットマシーンやらルーレットなんかをやってみたが、予算が限られて長旅をしている僕達には、そんなに楽しめるものではなかった。サーカス・サーカスの無料のビュッフェでお腹をいっぱいにして、ホテルも取らずにパーキングで車の中で三人とも寝た。きらびやかなラスベガスの灯と対照的な光景だった。
アメリカドライブの旅でやはり最初に感動したのは、アリゾナやニューメキシコの荒涼とした風景だろう。有名なグランド・キャニオンは、午後の日ざしの中で見たのに平たんで、ダイナミックさが伝わってこなかった。何度も見た写真と同じせいもあったのか、ほとんど感動がなかった。その夜、キャンプ場でカーキャンプをした。スーパーで買ってきた分厚いステーキにコショウをまぶして焼いて食べた。こんなに安くてうまいステーキは星空の下で食べ、ユウスケが、こっちの方が感動したと言っていた。
ところが、モニュメント・バレーを訪れた時の驚きと感動は今もわすれられない。グランドキャニオンの何万年もの後の姿とされているこの地は、侵食のため、渓谷が削られ、いくつもの円柱のような形が大地から突き出したような形で残っている。どこまでも続く壮大なサバンナ、その上に巨大なモニュメントが立っているのだ。近いものはハッキリと、遠いものは霞んで見える。近いものさえ、そのスケールのため近くみえるが、かなり遠い位置にあるのである。この光景は僕の知っているどんな景色よりもはるかに大きく、僕のもっていた空間の観念を根本的に変えられてしまった。さらにこの荒野を車で走ると、様々な岩のフォーメーションが見られ、火星かどこか、他の惑星にいるような気分だった。モニュメントの大きさも形も様々で、しかもその幾つかはインディアンの居住地になっている。こんな場所で生活する彼らははたしてどんな感覚をもっているのだろうか。